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日本と英国の違いは、こんなところにも

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数日前、イギリス各地の地方紙が同じフロント・ページを構成した。そこにあるのは「あなたは一人でいる時も、私たちはあなたと一緒にいる」の言葉。この言葉や言葉の持つ姿勢に励まされた国民がどれほどたくさんいるか、計り知れない。お年寄りや頼る人が周囲にいない人は特に、である。

日本政府は「緊急事態宣言」を出せるように特措法を成立させてわずか1週間後、休校要請を段階的に解除していくと発表した。イベントなどの自粛要請は続いているものの、K1は開催するという。これを見て自粛をやめる学校やイベント、ライブハウスなどは増えていくだろう。他国は次々とより厳しい施策を講じ、同じ「要請」であっても企業や国民はそれを実行しているというのに、だ。そんな国だから、検査を拒否したり、結果が出るまで待つよう要請されたにも関わらず結果を待たずに勝手に自宅に帰ってしまうような国民も出てくる国なのである。また、首相の会見は抽象的な話ばかりのうえ回数も少なく、毎日のように行って具体策を国民に伝えている英国とは大違いである。

英国のボリス・ジョンソン首相の会見は、必ずメッセージが書かれた演題で行われる。ある時は国民がコロナウイルスについて国民保険サービスのサイトにアクセスできるアドレスだったり、その「国民保険サービスを守ろう」だったりする。

彼はレストランやカフェ、パブ、映画館、劇場などを閉める「要請」を国民にし、デパートを含め様々な店舗側もそれに協力し、持ち帰りや配達、スーパーマーケット以外はほとんど閉めたらしい。そんな環境下にあるから国民は買い占めに走っているが、スーパーはみんなに食料品や生活必需品が行き渡るよう、それぞれ一人3品までとかトイレット・ペーパーや消毒剤、石鹸、常温ミルク(超高温加熱処理法)などは2パックまでとか制限を設けて販売する方向にシフトした。その上、お年寄りや障害者の人々、NHSの医療従事者などは自分のペースで安心して買い物できるように、彼ら専用の曜日・時間帯も設けはじめている。さらに感心するのは、例えばそれはテスコでもセインズブリーでも月・水・金なのだが、セインズブリーは朝8時から9時、テスコは9時から10時と時間差で行っていること。外出が容易ではない彼らのために、一日にはしごして買い物できるようにしているのである。

その一方、持ち帰りができる例えばマクドは全ての救急サービス隊員と医療従事者などに飲み物を無料で提供、Pret a Manger はNHS(国民保険サービス/病院/英国民は無料)で働く人々に無料で飲み物を、食べ物は半額で提供。福祉国家イギリスならではの光景である。

また英国は、これら閉店によって企業の倒産や雇用者の生活が脅かされることを阻止するために、2500ポンド(約32万円)/月を限度として給料の80%を補助することに決めた。全てのフリーランスも最低賃金を保証する。これは、日本のように学校閉鎖によって仕事に行けなくなる親のためだけではなく、全ての国民が対象だ。

また英国は、アパートや家を借りている人が賃貸料を払うことが困難になった場合、家主は3ヶ月の支払い猶予をするよう通達。購入した家のローンの支払いも、3ヶ月の猶予が決められた。

学校の閉鎖も行われ、だけど例えばスーパーの配達人や医療・救急従事者、ソーシャル・ケアの人々の子供達、日常生活に問題を抱える(虐待や薬物問題を持つ親の)子供たちは、行っていい。他に行く、あるいはいる場所がない子供たちのサポートが、閉鎖が決められた段階でちゃんと考えられているのだ。その上、収入が低い家庭の子供たちにはバウチャーが配布され、それはスーパーなどでサンドイッチなどランチに引き換えることができる。

特定の持病を持っている人は、3ヶ月の自主隔離が要請された。彼らへは追って、食料品などの配達について詳しく説明されることになる。

事業融資制度は、1年間、金利なしで受け付ける。

英国ではいま、地下鉄のいくつもの駅 - 他の路線への乗り換え駅ではない - も閉鎖された。本数も減少させている。路線自体、閉めてしまったところもある。

図書館によっては、郵便での貸し出しを行っているところがある。希望すれば送ってくれるし、郵送料は無料だ。

また、宅配ドライバーが配達してきたとき、受け取り人はペンを受け取ってサインする必要はなく、ドライバー自身が記録する方法に切り替えた。

私は2月初めに帰国し、やはり自分の生まれ育った国は暮らしやすいと思う反面、買い物をしてカードで払うとき、気持ちが暗くなる。日本ではほとんどの店で店員がカードを触るし(欧州では客が自分で機械に差し込むことがほとんど)、客はペンとレシートを受け取ってそこにサインしなければならない。それだけでウイルスに感染する危険性は倍増する。欧米では今、(お札に触れることになるから)現金払いを断るところもあるぐらいだ。ただし欧米ではデビット・カードがずっと以前から普及しているので、それは問題にはならないだろう。かたや日本は「キャッシュレス」は普及しているとは言い難い。日本政府は国民の経済的補助を考えており、その案の一つにギフトカードがあるが、紙をやりとりする方法はウイルスを防ぎたい今回は論外である。ちなみに、高速道路無料だとか旅行代金補助だとかいう特定の業界、特定の人だけに向けた補助の案が出ていることは、バカバカしいとしか言いようがない。経済が悪くなって困るのはあくまでも日常生活。日本の議員は一体どんな思考をしているのだろう。

日本は感染者数は他の先進国に比べてずっと少ない。それは検査数自体が少ないからである。潜在的な感染者はもっと多いはずで、危機意識をもっと持たなければならないし、国は具体的な対策を国民がわかりやすいように指南しなければならない。国民側も「要請」は「禁止」と捉え、それぞれが危険に対する意識をもっと高めなければならないのではないか。

ボリス・ジョンソン英首相は、母の日である今日、母親に会いに行くのではなく「電話やスカイプなどのテレビ電話などがベストです。不要不急の接触や接近を避けましょう。お年寄りや体の弱い方はコロナウイルスで死亡する可能性が統計的に非常に高いからです。私たちはこの脅威を、誤魔化すことはできません」と会見した。いつものように、「要請」に具体的な理由を添えて。




by yukaashiya | 2020-03-22 13:44 | 帰国編


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