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ペロの240マイルの旅

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(ペロと生産者夫婦/写真はデイリー・テレグラフ紙)

ロンドンへ戻ってきた週は温かかったものの、翌週から冷え込んで、昨日なんて数分ずつだけど何度か雪が舞った。いまも氷雨が降り始めたところで、今夜も冷えそうだ。

そんな中、心が温もるような記事が、デイリー・テレグラフ紙に載っていた。

犬がたった1人きりで、12日間をかけて240マイル(約384km)の旅をした。イングランド北部のカンブリアから、生まれ故郷のウェールズの牧場に戻りたい一心で、である。

犬の名はペロ。4歳の牧羊犬で、カンブリアにある牧場で試験的に使われていたという。ところがある日のこと、ペロは牧場主が気がつかないうちにいなくなっていたそうだ。

ペロはそれから、1日あたり平均して20マイル(約32km)を走ったことになる。行方不明になってから12日後の夜、生産者のジェームス夫妻が夕食を食べ終えた後にご主人が玄関の扉を開けると、そこにペロが立っていた。ペロは喜んで飛び上がり、ご主人の周りをジャンプしながらグルグル回ったそうだ。よほど嬉しかったのだろう。

ジェームス夫人の推測では「おそらく新しい牧場に馴染めなかったんでしょう。12日間走り続けて少し痩せましたが、体調に問題はないようです」とのこと。

それにしてもペロは、どうやってそのあまりにも長い道のりを帰ってくることができたんだろう。犬の中でも労働犬は、自然に備わった方向感覚と空間認識力が特に優れているらしいが、それにしたって遠すぎる。ジェームス夫人は「ミステリーだわ」と言いながらも、こう考えてもいる。

「ペロにはマイクロチップが埋められているので、道中のどこかでペロと接触した人がその情報によってペロがこの家へたどり着けるよう取り計らってくれたんじゃないでしょうか。そうでないと、とても自分1人で帰って来れる距離ではありませんもの」

ずっと育ててくれたジェームス夫妻の元へ戻りたい、その一心がペロにそうした幸運を授けてくれたのかもしれない。ジェームス夫妻はペロの気持ちを汲み、これからも一緒に暮らすことにしたようだ。
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by yukaashiya | 2016-04-29 05:53 | 英国生活編 | Comments(0)

チャールズ王太子がエリザベス2世女王へ贈った言葉

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(エリザベス2世女王と英国王室未来の3世代にわたる王)

昨日はエリザベス2世女王の誕生日。世界各国へ大々的に報道されたことだろう。英国ではロンドン中心部でもハイドパークなどで祝砲が打たれたり、ウインザー城へ詰めかけた人々の前へ女王が姿を現わすシーンもあった。今日は雨の中、米国のオバマ大統領と夫人がウインザー城へ祝いに訪れている。

昨日、洒落てるなあと思ったのは、チャールズ王太子が女王へお祝いの言葉を朗読したことにある。その文章は英国の誇れる文豪、シェークスピアの「ヘンリー8世」の第5幕、第5場にあるシーン。カンタブリー大司教がヘンリー8世王を前に幼いエリザベス王女(のちのエリザベス1世女王)が将来、優れた君主になるであろうと語るセリフの部分である。今年はシェークスピア没後400周年にあたるからそれを選んだのかもしれないが、こういう場面からも英国の文化における感度やセンスの高さが感じられる。

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Cranmer:
Let me speak, sir,
For heaven now bids me ; and the words I utter
Let none think flattery, for they'll find's truth.
This royal infant - heaven still move about her! -
Though in her cradle, yet now promises
Upon this land a thousand thousand blessings,
Which time shall bring to ripeness : she shall be -
But few now living can behold that goodness -
A pattern to all princess living with her,
And all that shall succeed : Saba was never
More covetous of wisdom and fair virtue
Than this pure soul shall be : all princely graces,
That mould up such a mighty piece as this is,
With all the virtues that attend the good,
Shall still be doubled on her : truth shall nurse her,
Holy and heavenly thoughts still counsel her:
She shall be loved and fear'd : her own shall bless her;
Her foes shake like a field of beaten corn,
And hang their heads with sorrow: good grows with her:
In her days every man shall eat in safety,
Under his own vine, what he plants; and sing
The merry songs of peace to all his neighbors:
God shall be truly known ; and those about her
From her shall read the perfect ways of honour,
And by those claim their greatness, not by blood.
.......
She shall be, to the happiness of England,
An aged princess; many days shall see her,
And yet no day without a deed to crown it.



ちなみに、カンタブリー大司教のことを日本では「カンタベリー」と記されるがそれは米国英語読みで、英国英語読みだと「カンタブリー」が正しい。

それにしても、なぜ日本では英国女王のことを「女王」というのに、お世継ぎは「王太子」でなく「皇太子」と記すんだろう。日本は「皇族」だから皇太子でいいけれど、英国は「王族」だ。かつての英国では王政が廃止された時代もあったが、英国人は「emperor (皇帝・天皇)」ではなく「King(王)』を選んだ」からトップは「王」であり「女王」で、その子供達は「王太子」であり「王女」なのに・・・そう、王女のことは日本でも「王女」と表記するんだよね。「王子」は「王子」だしね。なのになぜ「皇太子」(笑)。

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by yukaashiya | 2016-04-23 06:46 | 英国生活編 | Comments(0)

英国への「帰国」

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(現在滞在中のロンドンの家)

今年も春の日本への帰国を経てロンドンへ。使ったフライトはJALで、羽田での乗り換えだった。せっかくなので東京で友人・知人に会っていくことも考えたが、今年は関西でやらなきゃいけないことが山ほどあったためそれは断念した。

久しぶりに乗ったJAL国際線の機材は新しいらしく気持ちが良かったが、アイマスクや耳栓などのアメニティがついていないのにはびっくり(少しは予測していたものの)。12時間のフライトでアメニティがないフライトって、おそらく外国の航空会社の便では考えられない。その上、座席には足置きがなくて下ろしっぱなしだったので足はパンパンにむくみ(足元のスペースは以前より少し広くなっていた)、JALのシートは昔から硬いので薄いクッションを買っていって敷いたがそれでもお尻がめちゃくちゃ痛くなったほどだった。

JAL便は他の航空会社と比較して日本発着便としては最も高い料金のはずなのだが、食事も質素なイメージでびっくりした。さらに驚いたのは、CAの誰も挨拶に来なかったこと。わたしはJALグローバル会員で(それを維持するために会費が年1万円のカードに加入している)、ワン・ワールド・チームの航空会社に搭乗した時は他の航空会社のCAでさえ「○○様ですね。ご搭乗ありがとうございます」と座席まで挨拶に来るのに、当のJALでそういうことが全くなかったのだ(以前はあった)。企業として再建は果たしたにしても、サービス業として成長できているのだろうか。

長いフライトを終えてロンドンに到着したのは、夕方近く。ヒースロー空港の外へ出てロンドンの風にあたると、ああ今年もロンドンに「帰ってこれた」とホッとする。それに、今年の入国審査は過去5年間で最短の約1分だった。なぜなら、学生ビザを取って行ったからである。

人生において、初めての学生ビザ申請!

英国へは日本人は6ヶ月までならビザ無しで入国できる。ただし、6か月滞在の許可をもらうためには、入国審査であれこれ聞かれる(すぐ帰ることが分かってるツアー客にはバンバン6か月OKのスタンプを押すらしいけど・笑)。わたしのように何年間にもわたって毎年6か月暮らせてもらえているケースは非常にレアらしい。

ただ、今回のような学生ビザ申請時は、何年間も毎年半年間ロンドンに滞在していることが逆にネックになりはしないかと気にはなった。年齢だって、学生ビザを申請するような年齢ではないし(笑)。実際、ビザを取得したわたしに対して、英国のビザや入国管理の厳しさを知っている人々は「よく取れましたね〜っ」と口を揃えた。だけど、ロンドンで腰を据えて英語や歴史、文化を勉強したい、4つの季節を堪能したいなど、様々な思いからトライしてみたのだった。

せっかくもらった学生ビザ。

しっかり勉強しなくちゃね。


今日はエリザベス2世女王の誕生日。公式イベントは毎年、気候のいい6月に行われるが、今年は90歳の誕生日ということからマスコミは例年にも増して大々的に報道していた。明後日23日はシェクイスピアの没後400周年、その翌日はロンドン・マラソンが開催される。ロンドンはいつも華やかだ。なのに、ゆったりしている。この不思議な国を、四季を通して堪能できる幸せをいま噛み締めている。

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by yukaashiya | 2016-04-22 05:45 | 英国生活編 | Comments(2)

あっという間の帰国期間

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(母お手製のカレンダー/4月)

日本を離れ、英国中心の暮らしを送るようになって5年目に入った。今年の春は例年にも増してあっという間に過ぎた帰国期間だった。

38日間の滞在だったが、今年は例年通りの確定申告や歯医者・内科通いに加えてビザの申請や運転免許の更新もあり、しかも外耳炎になったり風邪を引いたりとバタバタな38日間だったのだ。ブログを更新しなくちゃと思いながら、出来たのは結局たったの3回(笑)。イベントの司会や原稿の執筆もあったから、忙しいと仕事以外ではもう文章を考えたり文字を書きたくなくなることがあるのだ。PCを買い換えてデータ移行などに数日を要してしまった経緯もある。それにしても、ブログはサボり出すと本当にキリがない(笑)。友人たちにも予定していた半分しか会えず不義理してしまったぐらいなので、ずっと訪問してくださっている方々、お許しを。

忙しいなかでも、母や妹、そして甥っ子と、いろんな話ができて良かった。毎年、春に会うたびに年を取っていっている母を感じるけれど、足の具合が悪い以外は83歳という年齢ながら大きな病気もせずにいてくれているのはとても嬉しい。

それでも、離れる時はやはり母の体のことが気がかりである。別れの朝はいつも母の温かくて柔らかい手を握ると感極まってしまって気の利いた言葉を送ることができずにいるが、とにかく体にきをつけて、いつまでも笑顔でいられる体調でいて欲しいと願っている。

出発は早朝だったのに、見送ってくれた母と妹に感謝。

あの朝の笑顔に支えられて、今回は来春までずっとロンドンで暮らす。
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by yukaashiya | 2016-04-19 02:55 | 帰国編 | Comments(0)

そんなに優しい男の人がいたなんてニッポン

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(先日、65歳で亡くなった著名な建築家ザハ・ハディド氏が設計したロンドンの競泳施設アクアティック・センター)

今日、離日に向けた作業をしながらテレビを見ていたら、シャープが台湾の企業・鴻海精密工業に買収されたニュースをワイドショーで報じていた。アナウンサーやゲストたちの話している内容は、現地の新聞でこれがいかに大々的に取り上げられているかということや、台湾の人々が「喜んでいる」だの「誇らしげ」だのといった、聞いていて赤面してしまうような言葉を喜色満面に並べたてていた。こうしてマスメディアが、日本が一番だと思い込む「ニホンバカ」を作り上げていく。

もちろん、日本にいるのはそんな人たちだけではない。

また、過日聞いた、高校時代からの友人の旦那の話なんて、「そんな風に感じ考える人が日本にいたんだ」と感動を覚えた。「いたんだ」と書いたのは、その男性ケンちゃんが、もうこの世にはいない人だからである。

わたしの友人とケンちゃんは、20代前半で結婚した。新婚旅行はアメリカ西海岸を巡る旅。何日目かでロサンゼルス入りした2人はディナーの後、ツアーガイドに「危険だからホテルからは決して出ないで下さい」と言われたという。

ところが深夜、友人はお腹が空いてたまらなくなった。ホテルの部屋の窓から外を見ると、向かいにピザ・ショップがある。そこでケンちゃんにピザを買ってきて欲しいと頼んだそうだ。ケンちゃんは「ガイドさんが外出しちゃダメだと言っていたじゃないか」と言ったが、友人は「ホテルの向かいのお店だもん。大丈夫だよ」と返し、ケンちゃんは「それもそうだな」と買いに出たそうだ。

友人が窓からピザ・ショップの様子を窺っていると、ケンちゃんが店内に入ってからしばらくすると店の方から銃声が響いてきたらしい。上空にはすぐにヘリコプターが飛んできて、それは通報を受けてやってきた警察のヘリだったらしく、ピザ・ショップにサーチ・ライトが当てられた。ドンパチやった挙句、店を襲撃していた犯人は捕まった。

その間、ケンちゃんのことが心配で部屋の中を歩き回っていた友人だが、しばらくするとケンちゃんは無事に帰ってきた。そして部屋の扉を開けた友人に向けて彼が口にしたのは、信じられないような言葉だった。

「ピザがすっかり冷めてしまった。ごめんな。こんな冷めたピザしか食べさせてあげられなくて」


そんなに優しいケンちゃんは、40歳そこそこでガンでこの世を去った。
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by yukaashiya | 2016-04-04 23:04 | 帰国編 | Comments(0)