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ガリーへの伝言

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(オックスフォード・ストリートで日曜日に行われていた演奏行進)

9月に入って秋の気配が漂っていたロンドンだったが、つい先日は31度を超える異常気象。それでも今年は夏らしい日がほとんどなかったこともあって、暑すぎても(同じ31度でも陽射しが強いので日本の31度より暑く感じる)みんな大喜び。だがその喜びも束の間で、数日後からここのところは最高でも21、2度、最高気温が20度を下回る日のほうが多い。それでも不思議なもので、寒がりだったわたしが日本にいた頃よりも薄着になっていることに気づく。薄手とはいえコートを着ている人の横で、わたしがノースリーブを着ていたりするんだもの(笑)。欧州で暮らし始める以前は欧州人に対して「あんたたちの季節や温度による服装基準は何やねん」と思っていたわたしだったが、環境によって人間はかくも変わるものであることを実感している。

それにしても英国(の立場)は強い。EU離脱が決まってから約3か月。セミナーの類を調べていてもタイトルはポジティヴな方向性を持つものがほとんどで、むしろ「EU離脱でUKは良くなる」といった記事なども目にする。もちろん、これからどうなるかは誰にも分からないことだけど、例えばロンドンの不動産価格はごく一部には下がったところもあるようだが、平均するとこれまで同様、上がり続けているそうだ。

そんな今日この頃、とある記事が目を引いた。「悪い評判さえカフェのオーナーのお好み」と題したそれは、マンチェスターのカフェのオーナーのびっくり仰天な行為を取り上げていた。看板(黒板)に、「トリップアドバイザーにレヴューを書いたある女性が彼女の人生において最悪だったポーリッジ(オートミールなどを牛乳や水で煮たもの。日本人にとっての朝粥みたいなもの)をお試しあれ」と書いてお店の前に出したのだった。

トリップアドバイザーは、世界最大の口コミサイト。オーナーは商売熱心な人で、自分の店の口コミ欄を毎日、真面目にチェックしているそうだ。そんな人だけに、その「ある女性」が書いたレヴューはショックだったに違いない。並の人なら、そんなレヴューはできるものなら消してしまいたいところだろう。

なにしろ口コミというのは恐ろしいもので、ハヴァス・ワールドワイドという大手広告代理店によると、10000万人を対象にした調査ではたった1つのネガティヴなコメントがあるだけで、38%の消費者が購入を思いとどまるんだそうだ。

だけどそのカフェのオーナーは、悪い口コミを逆手に取った。それほどメニューに自信があるからなのかもしれないが、それでも人間という生き物は人の意見に感化されやすいし(日本人だけかも?)、そもそも口コミは主観的なもので、それをわざわざ店の前の看板に書いて万人に知らせるとは、なんて勇気のある強い人なんだろう。

ただその一方で、もしかすると英国人特有の「アイロニー(皮肉)」精神から取った行動だったかもしれないとも思ったりする。なぜならば・・・。

店の名前は、Nook Neighbourhood Cafe。オーナーは、「トリップアドバイザー(に書いている男性)のガリーが“すっげえ小さい”と言っている、街で最も美味しいポーリッジ」と、別のオファーも出しているらしい。そこには「ガリー、わたしたちがヌックと呼ばれているのは、だからなんだよ(キミが何を期待していたのか、僕たちは全く知らないけどね)」と締めくくられているそうだ。ちなみに、nookは隅っことか小さいとかの意味を持つ。

そして・・・ガリー(Gary)は男性名として存在しているだけでなく、セクシーな男性やベッド・テクが上手い男性を表現する言葉でもあるのだった。なんて辛辣なアイロニーでしょう(笑)。
by yukaashiya | 2016-09-23 08:10 | 英国生活編


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