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イタリア人の「手の平包み」

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(ナポリ市内にあるダンテ広場のダンテ像)

ナポリで滞在しているレジデンスは5階建て。日本でいうところの6階建てで、その5階にいる。以前に書いたことがあるが欧州の建物はたいてい天井が高いので、日本の建物の1.3倍〜1.5倍ぐらいの高さがある。5階までの階段を数えてみると、98段あった。エレベータなしである(笑)。

おなかが空いていると上がれないので、帰ってくる前にどこかで軽くつまんでくる。今日は近くのカフェでパニーニとカプチーノを注文。その店のカプチーノは表面に蜂蜜で花を描いてくれるのだが、これが抜群に美味しい。日本では蜂蜜が高いので日本のカフェで普及させるのは無理だろうが、個人でぜひ試してみて欲しい。蜂蜜の質にもよるだろうけど、ちょっと感動する美味しさがある。

カフェでは屋外部分のテーブルについた。イタリア、フランス、ギリシャは屋外にテーブルを出しているカフェやレストランがとても多く、冬は屋外用のストーブを炊いてくれているのでけっこう温かい。

パニーニを食べたあとタバコをくゆらせながらカプチーノを愉しんでいると、斜め向かいの洋服店から出て来た年輩の男性がニコニコしながらこちらへ向ってくる。彼はカフェに用があるのではないらしく、明らかにわたしのほうへ笑顔で向ってくる。怪訝に思っているとわたしの目の前に立ち、たばこを口にくわえた。ライターを貸して欲しいらしい。これは欧州ではよくあることなので、わたしは快くライターを差し出し、ついでに火をつけてあげた。

するとこのおじさん、ライターを握ったわたしの手を、両手でしっかりと包み込む。まるで恋人の手を温めるように。まるでマッチ売りの少女のかじかんだ手を寒さから守るようにしっかりと密着させて。わずかに開いているのは、火が立っている部分だけ。おじさんはタバコに火がつくと目を細め、たばこを持つ手をあげて「グラッツェ」をわたしに伝え、雨の中へ去って行った。わたしはといえば、ただ呆然としていた。

関西弁でいうと、知らんおっさんに手ぇ握られてん、というシチュエーション。ところがこれ、イタリアという土地柄のせいか、イヤな感じが全くしなかったのである。

そういや、これに近いことがナポリに来てすぐにあった。中央駅に観光客用インフォメーションがあって、そこにすごく親切で気の利くスタッフが一人いる。これまでたくさん旅行してきたが、こんなに気の利くスタッフは他で見たことないというぐらいな人である。

それは40歳ぐらいの男性で、その人にとある場所へ行くのにバスを勧められ、歩いたら何分ぐらいかかるか聞いた時のこと。カウンターに載せていたわたしの手の甲に、彼は首を横に振りながらまるでわたしをたしなめるようにそっと自分の手を載せて「遠過ぎるよ」と言う。

サワるなニイちゃん、と思ったけど、親切に教えてくれている人にそんなことが言えるはずもない(笑)。その人、そのあとも3回ぐらい載せてきた。地図を広げて説明してもらっているから、わたしはカウンターから手を外すわけに行かず、されるがまま(?)。そのうち、これはこの人のクセなのかなと気にしなくなった。

だけど今日のおじさんのこともあり、イタリアでは初対面でもこういうスキンシップがありなのかなあと思えてきた。日本ならセクハラでクレームがつきそうなこの行為は、もしかしたらイタリアでは習慣のようにあたりまえなのかもしれない。


人の習慣は さながら枝の上なる葉の 彼散りてこれ生ずる似にたればなり
                     -ダンテ「神曲」より-

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(ダンテの像の後ろにある立派な建物は学校。お母さんたちが迎えに来ていたところをみると、小学校らしかった)
by yukaashiya | 2014-02-05 08:34 | イタリア生活編


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